◇監査役の権限(会計監査限定の定め)◇
役員変更の登記のご依頼いただいた際、注意しなければならないのが、監査役がいる会社の場合です。
平成27年5月1日、会社法が改正され、監査役を設置している会社のうち、監査役の権限が会計監査に限定されている場合、その旨を登記しなければならなくなりました。(会社法第911条第3項第17号イ)
(有限会社の監査役については、当然に会計限定監査役の定めがあるものとみなされるので、この登記をする必要はありません)
そもそも、株式会社の監査役には大きく分けて2つの職務があります。
①業務監査(取締役の業務執行が法律や定款の定めに従って行われているか、著しく不当な行為をしていないかの監査)
②会計監査(会社の作成する計算書類等が適正に処理されているかの監査)
原則は①の業務監査権限(+会計監査権限)ですが、定款で定めることによって②の会計監査権限のみに限定することができます。
これが「会計監査限定の定め」と言われるものです
これまでは、登記簿を見ても監査役の氏名しか記載されていなかったので、その会社の監査役の権限がどこまであるのかが定款を見ないことにはわかりませんでしたが、この平成27年5月1日の改正以降は、登記簿を見ればその会社の監査役の監査権限の範囲がわかるようになりました。
ただし、会社法改正前から会計監査限定の定めがあった株式会社は、経過措置として、平成27年5月1日以降に初めて就任もしくは退任する監査役の登記と一緒にすればとされています。(改正会社法(附則)第22条)
なので、現段階ではまだ登記をされていない会社もあるはずなので、登記簿に絶対記載されているとは言えませんね
もちろん、これは猶予を設けていますよーという措置なので、絶対に監査役の登記まで待つ必要はなく、すぐに登記をしても大丈夫です
なお、
「会計監査限定の定めがある旨の登記」が必要となるのは、以下の条件に全て該当する株式会社です。
「平成18年4月30日以前に設立された株式会社の場合」
資本金が1憶円以下である。(旧商法時代の平成18年5月1日当時、資本金が1憶円以下であり、かつ負債の金額が200憶円未満)
発行する全ての株式に譲渡制限の規程がある。(平成18年4月30日以前から現在まで)
監査役の監査の範囲について、定款を変更していない。(平成18年5月1日から現在まで)
監査役会及び会計監査人を設定していない。
上記の条件を満たす会社は、実際の定款には「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定め」が定められていなくても、その旨の定めがあるものとみなされているためです。
「平成18年5月1日(会社法施行日」以降に設立された株式会社又は平成18年4月30日以前に設立された株式会社で、かつ平成18年5月1日以降に譲渡制限規定を設定した株式会社の場合」
発行する全ての株式に譲渡制限の規程がある。
監査役会及び会計監査人を設置していない。
会計限定監査役の定めがある。
登録免許税は1件1万円ですが、役員変更と税額区分が同じなので、他の役員変更の登記と一緒にすればあわせて1万円でOKです(資本金が1億円を超えない場合)
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