◇増資の手続（現物出資）◇

2020.09.04

増資のご依頼をいただきました
今回は金銭出資ではなく、現物出資での増資手続きです。

現物出資とは
現物出資とは、金銭以外の財産を目的とする財産出資のことをいいます。
そもそも、出資とは金銭でなされるのが原則なのですが、不動産、有価証券、特許権など金銭以外の財産でも行うことができます

　現物出資の対象になる資産の例
　　動産（自動車・ＰＣ・ＯＡ機器）
　　不動産（土地・建物・設備）
　　有価証券（株式・債券・手形・小切手等）
　　債権
　　無体財産権・知的財産権（特許権・実用新案権・商標権等）
　　無形固定資産（営業権・ノウハウ等）
　　会員権（ゴルフ・リゾート等）

現物出資を行う場合、その物の評価が重要となります
なぜなら、出資する財産が架空なものであったり、増加する資本金等の価格（発行する株式の額）に相当する価値がないとなると、会社資本の空洞化がおこってしまうからです

そのため、現物出資の場合は原則として、現物出資財産の価格の評価について、裁判所が選任する検査役の調査を受けなければなりません。

「新たに株式を発行し、あるいは自己株式を処分しようとするとき、金銭以外の財産を出資の目的とする場合（会社法第199①三）には、検査役の選任を裁判所に申し立てなければならない（会社法第207 条）」

しかし、裁判所から選任された検査役による調査は、通常数ヶ月の期間＆数十万から数百万の費用がかかることから、実務ではあまり利用されていません。

そこで、まず平成2年の商法改正において、「弁護士が現物出資等の事項につき相当であることを証明するときには検査役調査を省略する」などの改正が行われ、
更に平成 14 年の商法改正により、株式会社、有限会社の現物出資等につき、それが相当であると証明を行える者に税理士・税理士法人等も加わりました

弁護士、税理士の証明書以外にも、検査役の調査が不要とされる場合があります。
検査役調査が不要とされる例外は以下のとおりです

検査役調査が不要とされる5 つの例外（会社法第207 条）

会社法では、下記のいずれかに該当する場合は例外として「検査役の調査」を省略することを認めています。
①募集株式の引受人に割り当てる株式の総数が発行済株式総数の10分の1以下の場合
　（✽複数の現物出資者がある場合には、すべての現物出資者に割り当てる株式の合計数で計算する）
②現物出資財産の総額が500 万円を超えない少額の場合
　（✽複数の現物出資財産がある場合には、その価額の総額で計算する）
③市場価格のある有価証券(上場株式等)について定められた払込価額がその有価証券の市場価格以下の場合
　（✽市場価格とは、①その決定日における最終市場価格（決定日に取引がない場合等にあっては、その後最初にされた売買取引の成立価格）または②公開買付け等に係る契約における価格のうちいずれか高い額をいう（会社法施行規則43条）。）
④現物出資財産の払込価額が相当でることについて、弁護士、税理士等の証明を受けた場合(✽不動産が対象の場合には、不動産鑑定士の鑑定評価も必要)
⑤現物出資財産が会社に対する金銭債権であって、その債権について定められた払込価額の総額がその金銭債権にかかる負債の帳簿価額以下の場合

なかなか普段の生活では接することのないお話ですが、備忘録として残しておきたいと思います