◇使用人兼務役員◇

「使用人兼務役員」という少し特殊な役員についてご存じでしょうか?
あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、少し掘り下げてみたいと思います。

使用人兼務役員とは?
使用人兼務役員とは、役員のうち部長、課長、その他法人の使用人としての職制上の地位(*1)を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者のことをいいます。

(*1)”使用人としての職制上の地位“とは、簡単に言うと、会社内の地位のことです。部長、課長、支店長、工場長、営業所長、支配人、主任等法人の機構上定められている職務上の地位をいいます。したがって、取締役等で、総務担当、経理担当というように使用人としての職制上の地位でなく法人の特定部門の職務を総括するものは、兼務役員には該当しません。
つまり、役員でありながら部長や課長という会社内での地位にあるような人(取締役営業部長など)で常時使用人としての職務に従事している人を使用人兼務役員と言います。

使用人兼務役員にならないのは?
次のような役員は使用人兼務役員となりません。

1 代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人
2 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
3 合名会社、合資会社及び合同会社の業務執行社員
4 取締役(委員会設置会社の取締役に限る。)、会計参与及び監査役並びに監事
5 上記1~4のほか、同族会社の特定の役員(*2)

(*2)同族会社の特定の役員は、以下のすべての要件を満たす役員
2株主グループの第1~3順位までを合計して、所有割合が50%超となる株主グループに属している役員
2その役員の所属する株主グループの所有割合が10%超
2その役員(配偶者及びこれらの者の所有割合が50%超である他の会社を含む)の所有割合が5%超

つまり、「定款等の規定又は総会若しくは取締役会の決議等によりその職制上の地位が付与された役員」は使用人兼務役員とはなりません。
なお、同族会社の使用人のうち税務上みなし役員とされる者も使用人兼務役員となりません。

〈具体例〉
○「取締役経理部長」・・・使用人たる職制上の地位を有しているため、使用人兼務役員に該当する。
✖「取締役営業担当」や「取締役経理担当」・・・「営業担当」、「経理担当」取締役は、取締役の中での役割分担であり、使用人としての地位ではないため、使用人兼務役員には該当しない。
✖「非常勤の取締役営業部長」・・・営業部長の肩書があったとしても、使用人兼務役員は常時使用人としての職務に従事していなければならないため、使用人兼務役員に該当しない。

使用人兼務役員のメリット
①「使用人分給料」は、定期同額給与の制約を受けない                      
税法上、役員報酬は、原則として毎月定期同額とされていますが、使用人兼務役員の「従業員部分」の給料は、毎月変動させることが可能です。

②賞与・残業手当を支給することができる                         
役員賞与は、「事前確定届出をしていない限り、原則として損金になりませんが、使用人兼務役員」の「従業員部分」の賞与は、損金にすることができ、また、「従業員」業務の残業手当も損金にすることが可能です。

③役員でも雇用保険に加入することができる                                   
役員は、雇用保険に加入することができませんが、使用人兼務役員の「従業員部分」は加入できます。また、役員は労働保険の対象から外れますが、使用人兼務役員の「従業員給与部分」は労働保険(雇用保険、労災保険)の対象となります。

プッシュピン一般社団法人の場合
一般法人における役員は理事と監事です。
一般社団法人の社員や、一般財団法人の評議員は、法人の役員には含まれないので、役職が付く理事及び監事以外であれば、使用人兼務役員に該当する可能性があります。

理事としての責任
前提として、一般社団法人の理事は、法人に対して、委任契約に基づいて善良なる管理者としての注意義務を負います。
さらに法令、定款、社員総会の決議を遵守し、一般社団法人のために忠実に職務を行う義務(忠実義務)、競業避止義務などの義務も課せられます。
もし、理事が上記の義務違反を行った場合、一般社団法人に対して、これによって生じた損害を賠償する責任を負うことになります。これは、理事として報酬を受け取っていない場合も同様で、役員報酬を受け取っていないからといってこれらの責任を免れるわけではありません。

平取締役や平理事であれば、従業員として職務に従事されていることも珍しくないかと思います
今回のお話以外にも、いろいろな制度がありますが、ご自分の会社の現状と照らし合わせて、活用できる制度があれば検討されてみるのもよいかもしれません

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