◇成年年齢が20歳から18歳へ◇
皆さんは成年年齢が引き下げられるのをご存じでしょうか。
成年年齢の引き下げで変わること、変わらないことなど簡単に確認してみたいと思います☝
⦿成年年齢はいつから変わる?
来年、2022年4月1日から成人年齢が18歳になります。
日本では明治時代からずっと、成年年齢は20歳とされてきました。
しかし、平成30年6月13日、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とした民法の一部を改正する法律が成立し、この度引き下げられることになりました。
“民法”とか“法律の改正”と聞くと自分たちにあまり関係のない話のように感じられるかもしれませんが、民法は私たちの生活に密接に関係する基本法といえ、今回の改正は私たちの生活に大きく関わる改正であるため、しっかり押さえておきたいところです。
⦿成年に達すると何が変わる?
民法で定めている成年年齢には、
①一人で有効な契約をすることができる年齢
②父母の親権に服することがなくなる年齢
という意味があります。
つまり、成年に達すると、「親の同意を得なくても、自分の意思で様々な契約ができるようになる」ということです。
例えば、私たちの業務の中で関わることの多い場面として、次の2つがあげられます。
【1】不動産の売買契約
不動産を売買する際に売主・買主で結ぶ契約ですが、未成年者は成年者と比べて経験や知識が不足し判断能力も十分ではないため、未成年者が何らかの契約をするときは、原則として法定代理人(親権者等)の同意が必要です。
登記申請の際も、親権者から委任状をもらうのが一般的です。
もし、未成年者が法定代理人の同意を得ずに単独で不動産の売買契約等の法律行為をした場合は取り消すことができ、契約の取消しをすると、契約時に遡って最初から無効なものとされます。
⇒現在は18歳の方が単独で契約をしたとしても取り消すことができますが、成年年齢引き下げ後は、18歳、19歳の方から単独で売買契約を締結することができるようになるので、後からやっぱり取り消したいと言ってもできなくなります。
【2】相続に関する遺産分割協議
相続が開始し、相続人が親権者(被相続人の配偶者)とその子(親権に服する未成年者)である場合、遺産分割協議をするためには家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申立てしなければなりません。通常、親権者は未成年者の法律行為について代理することができますが、親権者が子の分割協議についても代理できてしまうと自分に都合のよくなるように協議を進めてしまう可能性もあります。
このように親権者と未成年者の利益が反する行為を「利益相反行為」といい、利益相反がある場合、親権者が子を代理することはできないため、その親権者以外の代理人を選任するのです。
⇒成年年齢引き下げで、これまで遺産分割協議に加われなかった18歳、19歳の方も、特別代理人を選任することなく単独で協議に参加できるようになります。
⦿成年年齢引き下げで20歳からしかできなかったこと全て18歳からできるようになる?
成年年齢引き下げで、これまで20歳の成人からしかできなかったことがまるごと18歳からOKになるわけではありません⚠
“18歳(成年)になってできるようになること”
“これまで通り20歳にならないとできないこと”
で区別されていることもあります。
▼18歳(成年)になったらできること
◆親の同意がなくても各種契約ができる
・携帯電話の契約
・一人暮らしの賃貸借契約
・雇用契約
・クレジットカードの作成
・交通事故の示談 などなど
◆10年間有効なパスポートの取得
◆国家資格の取得(司法書士資格、公認会計士、医師免許、薬剤師免許など)
◆結婚
※女性の結婚可能年齢はこれまで16歳でしたが、18歳に引き上げられ、男女ともに18歳になります。
◆性別取り扱い変更審判の申し立て
◆国籍の選択
◆単独で民事裁判の原告・被告になる
etc…
▼20歳にならないとできないこと(これまでと変わらないこと)
◆飲酒をする
◆喫煙をする
◆競馬・競輪・オートレース・競艇の投票権(馬券など)を買う
◆国民年金の納税義務
◆養子を迎える
◆大型・中型自動車運転免許の取得
これらは、責任の重大さ、健康被害への懸念、ギャンブル依存症対策などの観点から、従来の年齢を維持することとされています。
18歳から単独でできるようになることが増えます。
中でも一番の変化は「契約」についてではないかと思います。
成年になる、大人になるということ。
親の同意なしにできることが増えるということは言い換えれば、自分で考えて、判断し、それに伴う責任を自覚することが求められます。
もちろん大人であっても判断を誤って契約してしまうことはありますし、なんでも知っているというわけではありません。
ましてや、契約相手が悪い人間である可能性だってあります。
成年年齢が18歳になったからといっていきなり大人と全く同じことができるわけではないと思います。
これまで単独で法律行為ができなかった18歳、19歳がいきなり法律行為を行うとなれば、戸惑いやわからないことがあって当然です。
あらゆるトラブルも予想されますし、私たちの業務の中でも、これまで以上に注意しなければいけない点がたくさんあります。
いろいろな知識や経験を得て、「大人」として社会に参加していく。
私たちも微力ながらそのお力添えができればうれしい限りです。
司法書士の業務に関することはもちろん、またそれ以外のことでも各種専門家へお繋ぎすることが可能です。
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