◇民法の嫡出推定見直し~無戸籍者問題~◇

 

婚姻関係にある男女から生まれた子を「嫡出子」といいます。

 

民法の規定では、妻が結婚中に妊娠した子は、夫の子と推定され、結婚や離婚の時期によって子どもの父親を定めます。

そのため、 これまでの法律では、結婚した日から200日以降、または離婚後300日以内に生まれた子は、その結婚中に妊娠したものと推定しています。(民法772条)

 

さらに民法733条では、女性は離婚後6ヶ月を経過しないと再婚できない、とも定めています。(再婚禁止期間)

 

これらの制度は、女性が再婚後すぐに生まれた子どもの父親が誰かを争うことのないように、また早期に父親を確定させることで、養育などに関する子どもの法的地位の安定を図るため、明治時代に定められたものです。

 

しかし、この規定によれば、子どもの父親が前の夫ではなく現在の夫であったとしても、前の夫と判断されてしまうこともあります。

 

そして前の夫の子どもであるとみなされることを恐れて、再婚した女性が生まれた子どもの出生届の提出をためらいそのまま放置してしまうことで結果、戸籍のない無戸籍者(児)が問題となっているのです。

 

法務省によれば、無戸籍者は800人以上おり、令和2年9月末時点で法務省が把握していた無戸籍者は3235人いるとのことです。

 

戸籍がないと、進学や就職、結婚といった場面でさまざまな不利益を受けることがあります。

もともと子どものことを考えて定められたものであるはずなのに、無戸籍であるために不利益を受けるというのは本末転倒です。

 

そこで、「無戸籍者」問題の解消に向けて議論が進められ、嫡出推定の規定に、「離婚後300日以内に生まれた子も女性が再婚していれば再婚相手の子である」と推定する改正要綱案が出されました。

 

法改正はまだですが、この要綱案では、妊娠から出産までに何度か婚姻をしている場合は、出生直近の婚姻の夫の子と推定するものとし、これによって、離婚後300日以内に生まれた子も再婚していれば再婚相手の子と推定されるようになるとのことです。

 

・・・以上を簡単にまとめると、

 ⦿結婚・再婚後に生まれた子は、200日以内であっても現夫の子と推定。

 ⦿原則、離婚から300日以内に生まれた子は元夫の子とみなす。

 ⦿女性が再婚している場合は例外として現夫の子とみなす。

というような規定が盛り込まれているようです。

 

直接登記等に関係するところではないかもしれませんが、市民生活における一般法である民法の改正は、私たちひとりひとりの生活に大きく影響を与えるものです。

皆さまにとって身近な法律家であるといえる司法書士にとっても、法律の改正が我々の生活に与える影響を正確に理解することはもちろん、早い段階で皆さまにわかりやすくお伝えできるような事務所でありたいと思います。

 

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