◇父母の戸籍からたどれない子◇
戸籍とは、「人の出生から死亡に至るまでの親族関係を登録公証するもので、日本国民について編製され、日本国籍をも公証する唯一の制度」とされています。(法務省HPより)
通常であれば、相続人調査をする中で、戸籍をたどればすべての相続人が確定されるはずなのですが、旧民法時代の戸籍では、戸籍をいくら遡っても、相続権のある子の存否がわからない場合があったりします。
つい最近、そのめずらしい戸籍を扱う機会がありました☝
そもそも、旧民法は明治31年7月16日から昭和22年5月2日まで施行されていました。
旧民法の原則は「家」を基本として戸籍が作られています。
親族関係を有する者のうち一人を「戸主」としてその家族に属させ、戸主はその家族を統率する存在として様々な権利と義務(「戸主権」)が与えられていました。
➣戸主の権利
■新たな家族となる原因に対する同意権
・出生
・認知
・婚姻
・養子縁組
・復籍
・親族の入籍
■家族の去家に対する同意権
・離籍
・隠居
・分家
・家督相続
■家族の居所(住む場所)の指定権
■家族の入籍を拒否する権利
・戸主の同意を得ずに婚姻、養子縁組した者の復籍拒絶
・家族の私生児
・庶子の入籍の拒否
・親族入籍の拒否
・引取入籍の拒否
■家族を家から排除する(離籍)権利(ただし未成年者と推定家督相続人は離籍できない)
・居所の指定に従わない家族の離籍
・戸主の同意を得ずに婚姻・養子縁組した者の離籍
➣戸主の義務
■家族に対する扶養義務
以上からもわかるように、当時の戸主の権力は絶大なものでした。
ある被相続人の戸籍を死亡から出生まで順番にさかのぼっていったところ、一番古い戸籍に、「母ノ家ニ入ルコトヲ得ザルニ因リ一家創立」との文言がありました。そして父の欄は空白で、母の名前のみ記載されていました。
私は今回この文言をはじめて見たので、最初はんん?と思ったのですが、文章の感じから何となく読み取れなくもないですよね・・
✐一家創立とは・・
新たに戸主になる者の意思とは無関係に、法律の規定により当然に「家」が設立されることをいいます。
当時は、父の有無により差があったようです。
父の認知を受けていない子は「私生子男(女)」と記載され、母の家の戸主の同意を得られれば母の戸籍に入籍できましたが、戸主の同意が得られない場合は、その子供は子供だけの戸籍を編製(一家創立)したというわけです
今回のように非嫡出子が父母の家に入ることができなかった場合以外にも、子の父母が共に知れない場合や日本で生まれた子の父母共にどこの国籍をも有しない場合なども一家創立の原因となったようです。
現代の私たちから見ると、あり得ないような概念ですが、当時はこれが当たり前だったのですね・・・
昔の話で一見私たちには関係ないことのようにも思えますが、実は私たちの業務には今もなお関係してくる部分なんです。
今回は一家創立の戸籍が被相続人の戸籍だったので特に問題はなかったのですが、これがもし、相続人の戸籍だったとしたらどうでしょう?
もちろん、一家創立者の戸籍の父母の欄に記載があれば、子の戸籍の方から父親や母親をたどることはできます。
しかし、一家創立の戸籍は、その父親の戸籍にも母親の戸籍にも関連付けがされていません。
父親や母親の戸籍にはこの子の情報は一切載っていないため、父母の戸籍からはその存在が判りません。
ということは、父親または母親の戸籍からその子にたどりつくことができないため、父母が亡くなった場合、被相続人の戸籍から相続人を調査するという通常の方法では、一家創立者である子にたどり着けないことになります。
残念ながら私たちで知るすべはなく、一家創立者もしくはその関係者から何らかの情報がなければ、一切わからないというのが実際のところです。この場合、もし一家創立者がいた場合は相続人を欠いた状態で相続手続きが進められてしまうことになります・・💥
戸籍を見ることや相続人調査にある意味慣れてきたからこそ見落としてしまうことのないように、このようなイレギュラーなケースもあるということを頭に入れて、気を緩めず業務をしなければと改めて思いました。
何気ない会話に大切なことが隠れていることもあるかもしれませんね✧
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