@業務メモ@建物明渡請求
建物の賃借人が賃料を支払わない場合等には建物明渡請求をします。
まずは、内容証明郵便で支払いを請求し、それでも支払わない時は、内容証明郵便で解除通知をします。
それでもまったく支払いがない場合には建物明渡訴訟を提起します。
訴状は請求の原因に内容証明郵便を送ったことを詳しく書きます。また水道代等の共益費は附帯請求できないので、訴額に組み込んで書きます。そして水道料金等の明細書と物件目録、建物図面を訴状に綴じます。
証拠方法としては、建物の登記簿謄本、賃貸借契約書、内容証明郵便、等を添付します。
また付属書類として登記簿謄本、証拠の写し、家屋評価証明書、訴訟委任状、証拠説明書等を添付します。
裁判に勝訴しても退去してもらえない場合、強制執行をします。
建物明渡請求の強制執行は不動産の強制執行(債務者を退去させる手続)と動産の強制執行(債務者の荷物を処分する手続)を同時に行います。
まず、判決が被告に送達されて一週間が経過したら執行文付与の申立て、確定証明書申請、送達証明書申請を、判決を言渡した裁判所にします。判決確定日は裁判所に電話で確認できます。確定証明書は執行文付与の申立てのために必要な書類だが、執行文付与と確定証明書申請は同時にできます。
次に、物件の住所地を管轄する地方裁判所の執行官室に執行申立てをします。
必要書類は
・家屋明渡用執行申立書 2通 (債務名義の物件目録をコピーしてつける)
・動産用執行申立書 2通 (建物明渡と同時の時は2部でよい)
・執行文付債務名義 1通
・送達証明書 1通
・委任状 1通 (代理人がいる場合、代理人の資格に制限はない)
・物件の地図 1通 (ネットの地図でもよい)
です。
申請書は連絡したら裁判所からFAXで送ってもらえます。
申請が受理されたら、執行受理カードと保管金支払書を受け取ります。
保管金支払書に記入して出納係へ提出します。(現金 建物明渡 金8万円 動産 金4万円)
保管金を支払い、数日経つと執行官から催告期日の打ち合わせの電話がきます。
催告の日と催告から1ヶ月以内の執行断行の日の日程が決まります。
催告の日までに執行の業者を選定します。荷物の搬出、保管の業者と鍵を開ける業者(鍵がない場合)が必要です。催告の日に荷物の搬出の費用の見積もりをしてもらいます。
執行を取り扱う業者一表書は裁判所でもらえます。代金の支払は断行日に搬出費用、動産執行日に保管費用と処分費用となっているのが一般的みたいです。保管料はどこの業者でもだいたい同じ値段だそうです。
催告日には執行官と立会人、業者の方、債権者かその代理人が物件に行きます。
執行官が被告に催告書を渡し玄関等に公示書を張り、退去を請求します。そして執行官が強制執行調書を作成し、債務者と債権者かその代理人が調書に署名します。動産執行については大抵の場合債務者の荷物を換価しても財産にならないので動産執行の方は執行不能調書となることが多いです。強制執行調書は後日郵送されてきます。
債務者に親族等がいなく、退去させた後、債務者になんらかの保護が必要な場合、市の福祉課、保健所、福祉施設等に連絡して断行日以後の債務者の処遇を検討しなくてはなりません。
断行日に執行官立会いのもと、業者が荷物を撤去して債務者の占有を解除します。その際、執行調書・保管調書にサインをします。
執行官曰く、執行時に債務者の挑発にのる債権者がいる場合、問題になるケースがあるので、全てのことを執行官に委ねるのが大事とのことでした。
後日、保管調書及び執行調書が送付されます。
債権者は、債務者が不動産内に残していた動産を断行日より、およそ1ヵ月、保管しなければなりません。しかもその保管費用は、債権者の負担となります。
債務者の生命に問題ある時、意思能力判断能力に問題がある場合、後見人や保佐人、補助人の選任するために、時間がかかり、保管期限までに荷物の引取りが出来ないとの判断がされるケースがあるので注意を要します。その場合、変更の調書が送付され、債権者が嫌といっても、執行官の職権による期限延長を変更されるケースもあります。
保管期限内に債務者が荷物を引き取りにこれば、荷物を引き受けたとの受領書を債務者もしくは債務者代理人に書いてもらい、裁判所に提出することで、一応事件は終了となります。
その後、裁判所に事前に納めた予納金の返還通知が届く流れになります。
もし、債務者が荷物を引取りに来なければ、保管期限をもって、執行官より、廃棄してもよいとの通知をもらい事件が終了することになります。
今回、当事務所が受任した事件では、市の方、福祉の方、警察の方、保健の方、荷物搬出業者の方、鍵施錠業者の方、様々の方のご協力のもと、半年以上の時間はかかりましたが、事件は解決いたしました。皆様方の協力が無ければ、法律で認められる権利いわゆる裁判上で認められた権利であっても、それを実現するために障害があるとき、なかなか前に進まないことも多くあることを学びました
最後に、荷物搬出業者・保管業者の方には、こちらの無理なお願い、急な方針変更などに迅速に対応して頂き、大変お世話になりました。
もし、このような件で、業者選定にお悩みの際は、ご紹介させて頂きますので、お問い合わせ下さい。
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